ガルホッピゲン(Galhoppigen)に登る
ノルウェーの首都オスロの北西200kmにあるヨートゥンハイメン国立公園は、氷河によって作られた山岳と湖により見事な風景を見せてくれる。その中に、北欧の最高峰ガルホッピゲンがある。
オスロよりバスまたは列車でオッタ(Otta)に入り、ここからバスに乗りロム(Lom)でさらにバスで1時間行くと、その麓、スピテルスツーレン(Spiterstulen)に着く。ここには、山小屋、いや「山岳ホテル」というべき宿泊施設があり、食事つきで快適に過ごすことができる。今回は、オスロにあるDNT(Den Norske Turistforening=The Norwegian Mountain Touring Association .「ノルウェー山岳旅行協会」とでもなるのだろうか)でコースを教えてもらい、そのときにシングルルームの予約をとってもらった。
スピーテルスツーレンのロッジはいくつかの木造の棟からなり、メインの建物は受付・食堂・売店等の機能がある。宿泊棟はいくつか分かれている。その中の一つに割り当てられた部屋はあった。ホテルの管理人の女性が小さい部屋だ、といっていたが、3畳くらいの広さにベッドが置かれている。廊下にシャワーとトイレ。食事はメインの建物でとるが、夕食は山の中での食事とは思えないような雰囲気。朝はさまざまに置かれた食材を自由に取って食べる形式で、日本の山小屋から考えると、別世界である。ランチパック(朝食時に自分でサンドイッチをつくる)も頼むことができる。
スピテルスツーレンの朝はゆっくりだ。朝食は8時から。これが終わると、あわただしくなる。いろいろな方面に向け出発してゆく。ここの標高は1100m。ガルホッピゲンへは、Visa川の橋を渡り、西側の斜面をピグローブ川(Piggrove)に沿って急登。はじめは高山植物などもあるが、苦しい登り。1800m位までひたすら登る。これを過ぎると傾斜はゆるくなり、雪の斜面を登ってゆくようになる。正面に見えるピークはSvelnose(2278m)まっすぐ登って、カールの壁の上に出る。ここまでくると、この山が氷河の上にある山だと実感できる。そそり立つカール壁。道は左に進み、カール壁に沿って高度を上げてゆく。ガラガラの岩だらけの急斜面の道を登りつめると、スベルノゼ(Svelnose)のピークが間近になると雪の斜面は急になってゆくが、アイゼンを使うほどではない。このピークを左に捲いて、先にまたピークが見える。ケイルハウストップ(Keilhaustopp)2355mである。道はゆるやかになるが、また急な雪の斜面になる。
ケイルハウストップの頂上は広く、目の前にガルホッピゲンの頂上が見えている。右側から登ってきたユーバスヒュッテからの登山者の行列が点々と見え、山頂左には、小屋が見える。一旦、岩と雪の道を下降すると、約150mの登り。左側には雪のない道があるが、雪の斜面を直登するトレースも何本かついている。ここでは傾斜のゆるい左側の道から稜線沿いに登っていった。稜線からは雪に変わり、ゆるやかに登ってゆく。頂上直下にモダンなデザインの小屋(KnutVoleshytte)がある。これを過ぎると頂上。たくさん登山者が休んでいる。頂上には、望遠鏡のついた方向指示盤がある。頂上の向うは切れ落ちていて、数百mのカール壁であり、今登ってきた側とは全く異なる様相である。周りをぐるりと見渡すと,至るところに氷河があり、それが作ったホルン、U字谷、カール、そして削られた丸い頂きと、白と黒の世界で広がっている。気温10℃、快晴、無風。絶好の天気だ。歩き出してからここまで4時間。ノルウェーに来て3泊したので時差ぼけは直っていると思っていたが、夜中が明るいこともあり眠りが浅いので結構つらい登りであった。一緒に歩き始めたスペイン人の若者たちは、まだ着いていない。結構年配の登山者や子供もいて、にぎやかだ。
山頂でしばらく休んだ後、ヒュッテに寄ると、飲み物や絵葉書を売っている。絵葉書を10枚買うと、ヒュッテのスタンプを押してくれた。1枚15NOKだから250円位。ノルウェーは物価が高い。従業員のお兄さんに「コンニチハ」と挨拶された。昼のパンを食べたりして1時間近くたったので、下山開始。登りと違って軽やかだ。特に雪の道は硬くもなく、柔らかくもない歩きやすいコンディション。日本の春先のようにズボッと沈むこともない。2つのピークを右に捲いて左側の雪原にトレースがついている。これは快適。稜線の岩の道に戻り、岩の中を降り続け、カール壁の上部まで1時間で戻る。ここから東へ雪原をどんどん下る。礫混じりの道になると、雪原から雪解けの流れが始まる。ここから高山植物が見られる。これより上は、岩と雪だけの生物のいない世界。日本で見たことのあるような花もたくさんあるが、印象深かったのは藍色の花。目だたないが、青でも青紫でもない色であった。午後なのだが、この時間に登ってくる人ともすれ違う。日本の感覚で言うと「何してるの?」となるのだが、この地では真夜中になっても暗くならないのだ。ここまでは、隣のグリッターティンド(Glittertindノルウェー第2の高さの山)がよく見える。山頂部に大きな雪原を持っている。その下に、スピテルスツーレンの建物が真下に見えてくる。花の写真をとりながら700mを下り、テントサイトに出る。川にかかる橋を渡り、ロッジに着くと4時半。出発してから7時間後の下山であった。45NOKのビールで一人祝杯を挙げた。
翌日、ロム(LOM)に戻り、フィヨルドを越えて、この国第2の町ベルゲンへと、10時間のバスの旅である。
地図
Jotenheimen Vest Turkartserien2505 Ugland IT
Group
119NOK 5万分の一
ガイドブック
Norwegian mountains on foot DEN(Den Norske Turistforening)
100NOK ノルウェー全土の山岳ガイド
Walking in NORWAY CONNIE ROOS ISBN
1-85284-230-X
CICERONE PRESS Milnthorpe Cumbria ENGLAND $16.95
通貨 ノルウェークローネ 当時のレート 1NOK=17.3円