この旅を終わるにあたって

 この旅を終わるにあたって、一言。4ヶ月の不在中いろいろな方々にご迷惑をおかけし、またお世話になりました。感謝いたします。特に旅の準備をしていただいた、オーバーシーズトラベルの三尾奈緒子さんに感謝いたします。もちろん、こんなことを、「黙認」してくれた家族にも。

 そもそも、世界一周の航海に行こうと、夢のようなことを考えていたのは、子供の頃からでした。小学校の頃、外国航路の船乗りの叔父がおり、1年おきとか2年おきに帰ってきて、珍しい品とともに話を聞かせてもらった思い出があります。

 そのことと,小学校高学年で世界地図を見、中学で地理の勉強をしたことにより、地球の上がどうなっているかということを知り、そのうち、船で世界一周を、と,夢のようなことを考えていました。が、職に就いてしまうと,そんなことは実現するはずもなく、退職するまでの数十年間心の奥で,埋み火のようにあったのです。

 で,退職が日程に登ったとき、このことを思い出しました。

 ちょうど、地デジ化に伴い、テレビで『豪華客船の旅』などという番組が流され、こんな風になっているのだ、と映像で見せられました。が、欧米の大金持ちの世界の話で、現実の話とは思えませんでした。が、行くなら,日本の船ではなく、外国での生活をするのだから外国船で、と無謀なことも考えました。

 昨年の3月だったと思いますが、半信半疑で、船旅を扱っているいくつかの旅行代理店に,メールを出しました。全く初めてのことで,何もわからないので資料を欲しい、一人で、外国船で世界一周航海に行きたいのだが、と。その頃は、どこから出港するのか、どんな生活をするのか、いくらかかるのか,何千万なのか何億なのか、全く知識がありませんでした。

 いくつかの会社から,立派なパンフレットがどっさり送られてきたのですが、ただ一つだけ、料金表、というのが入っていたのが、三尾さんからいただいた返事でした。このように料金が設定されるという仕組みとともに、具体的な金額も知りました。
 これをみて、話は一挙に現実に近づきました。これくらいのお金で行けるのか、これなら払えるな、と。同時に、こういう配慮ができる人なら、旅のトラブルにうまく対応してくれるに違いないと思い、会社を一度おたずねして、いろいろなことを(ごく初歩的なこと)伺い、これなら行けるかもしれないという気になりました。

 ただ、問題は、言葉。僕の英語は、本を読むための英語で,コンバーセーションができません。4ヶ月も一人で生活できるのか、心配でした。そこで、2ヶ月間語学学校に留学することにして、そこで生活できたら行こう、と渋谷にあるEFという学校を訪ねました。この年で、語学学校に留学などが可能なのか、半信半疑で。そこでお世話になったのが、EFの高木絵美さんでした。背中を押してもらったような気がして、8〜9月マンチェスターにホームステーで学校に行くことになり、こちらも全く初めてのことなので、何が必要なのか、1から教えていただきました。マンチェスターでは、いろいろありながらも「最年長学生」として2ヶ月過ごせました。

 9月末にマンチェスターから帰国後、この旅に行くことにして、三尾さんと何度もやりとりしながら、具体的な準備を始めました。あっという間に10〜12月が過ぎ、1月の正月明けに,飛行機に乗ることになったわけです。

 この年になって、全く知らない世界で何ヶ月も過ごすというのは、本人は平気な顔をしているようでも、後押ししてくれる人がいたおかげなのです。

 旅はとてもおもしろく、これまで考えていた以上の収穫がありました。このなかでも、いろいろな方々のお世話になりました。日々感じたこと、学んだことは本文を見ていただくことにして、旅を終えた現在、残りの人生の栄養剤をもらったような気がしています。

                              旅の最終日の大西洋上にて