2000.10.31-11.3

 世界遺産に指定されて以来、白神山地は一躍有名になった。それ以来、登山者の立ち入りを禁止すると か、林道工事がどうなるとかで、世間から注目を浴びている。一方、山地とはいえ、登山に関する情報は あまり伝わってこない。この数年気になっていた白神山地であるが、この秋、意を決して出かけてきた。
白神山地の登山事情  白神山地の登山事情について、数冊の書籍を読むことにより調べた。それによると、

  • 1)「登山道」のつ いている山はいくつかであり、他の山は、踏跡程度の山、全く道がなくて沢を詰め薮をこぐか残雪期に頂 上を踏むかという山である。
  • 2)標高は、最高でも向白神岳の1200m強であり、高くはない。が、緯度 が高いこと、アプローチが整備されていないことなどで、登山は大変だ。
  • 3)世界遺産に伴い、白神山地 には、コア地域(核心部)とバッファ地域(緩衝部)が設定され、現在、立ち入り禁止の設定などで揺れ ている。

 そうした事情を踏まえ、今回は、11月で季節が晩秋であること、単独行であることなどを考慮し、 陸奥黒崎より白神岳へ登り、避難小屋に泊まり、そこから大峰岳縦走路を取り、十二湖へ出ることにした。 このコースは、「道は整備され」、避難小屋があり、核心部への展望があり、 さらに標高もこの山域の中では高い。

白神岳登山の記録

 期間は、2000年10月31日(火)~11月3日(金)である。概要は次の通りである。
10月31日(火) 夕方大宮を出、秋田まで。泊
11月1日(水) 秋田から奥羽本線、五能線を経て陸奥黒崎より白神岳へ。山頂避難小屋泊
11月2日(木) 白神岳より、大峰岳、崩山をへて十二湖へ。五能線沿線で泊
11月3日(祝) 秋田を経て大宮へ。

 10月31日(火)16:36大宮発こまちで秋田へ。秋田22:04。駅前の秋田ビューホテル泊。能代までの夜 行バスは、五能線に接続していないので、こういうことになった。

陸奥黒崎から白神岳へ

 11月1日(水)宿を出て、駅前のコンビニで食料を調達し、秋田6:33発の奥羽本線下り普通列車に乗車。
次第に通学列車の様相を呈してくる。東能代で乗り換え。能代駅までは6両編成で、さながら高校生専用 列車。数校の生徒が乗っている。
それを過ぎると、2両になり、がらがらで五能線を走る。左には海、右には紅葉の山とすばらしい景色。
登山口の陸奥黒崎へ9:11着。下車客1名のみ。 陸奥黒崎駅を出て、いったん海側に行き、左折し鉄道、国道を越えると登山道の標識あり。
少し歩くと、白神山荘の建物が左側に見える。
さらに進むと,「日野林道入口」の標識。
舗装道路を進むと、駅より約1時間で駐車場 (広い、トイレが設置されている)に着く。
そこから500mで登山口。登山口は広場になっていて登山届を記入するようになっている。 熊に注意の看板あり。ここで休憩。

 10:00出発する。ついに雨がぱらぱら落ちてくる。標識に沿って、紅葉のブナの林に入る。黒崎から白神岳への登山道は白神山地の中では珍しく信仰登山の道であったようだ。道ははっきりしている。標識も ある。40分で二股分岐。沢沿いの道は「整備中」とのことで「マテ山経由の道を通るよう」表示がある。 沢をいくつか横切りながら斜面を登って行く。途中、登山道のすぐ傍で「バサバサ」という音と共に、大 きな鳥が飛び立つ音に驚かされる。雉だろうか。40分ほどで「最後の水場」の表示。ここで今日明日の 水2㍑余を汲んでさらに斜面を登る。

 急登を上りつめると、支尾根に出て、蟶(マテ)山分岐。ここまで登山口から2時間。 左に行けば蟶山だが、省略。尾根の緩やかな道を進んで行く。ときどき下るゆっくりの道である。 紅葉のブナ林の中を進む。
 ブナからダケカンバに変る頃、道は急になり、木が低くなり笹の 中の道になると、稜線は近い。展望が開けるところに出るがあいにくの天気である。途中10人くらいの パーティーとすれ違う。日帰りのグループのようだ。この日は登っている人はいないだろうと思っていた ので驚く。
 前日に降ったらしい雪がところどころ残っている。急登が終わると、稜線に出て、大峰岳分岐 に13:35。ここから平らになり、水がたまって歩きにくい道を15分ほどで、ガスの中に小屋が見える。
 小さな社を過ぎ、立派なトイレの小屋の向こうに、とんがり屋根の避難小屋がこぢんまりと建っている。

 誰もいない。荷物を置いて空身で頂上へ。依然として視界20mくらい。2-3分でガスの中の白神岳の山頂 に着く。頂上は三角点がある広場になっている。視界悪し。10分ほど滞在して小屋に戻る。なお、頂上 から50m降りると水場があると書かれていた。

 避難小屋は、小さな建物だが、中は3層に別れていて、収容人数は見かけより多い。 よく工夫された建物だ。
 3階に登り、荷物を広げシュラフに入り休憩。地元の山岳会の人達のものであろうシュラフやマットが置いてある。窓から外を見ていたら、突然、向こうに山並みが見えてくる。白神山地最高峰の向白神 岳とそれにつながる山々である。
 写真を撮ったり眺めたりしているとまた、ガスの中に入る。今日はこの小屋で一人かと思っていたら、 3時過ぎに若い2人パーティーが到着。十二湖から登ってきたとのこと。 彼らは一階に陣取る。日没が4時半くらいなので、4時には夕食のしたくをし、さっと食べ、5時半には シュラフにもぐり込む。この日の夕食は、パックの赤飯とパックのおでんと味噌汁。ワイン付。昨日もあまり寝ていないので、日が落ちる頃寝てしまう。途中風の音で何度か目を覚ましたが、静まり返った小屋 の中で翌朝5時の起床まで、久しぶりによく寝た。

十二湖へ下る

 11月2日5時に起床。朝食の準備。湯を沸かしてカレーとご飯を温め食べる。天候は、依然として小 雨、風はない。荷物を片付け、パッキング。

6:15に小屋を出る。視界は少し広がっている。
6:30に大峰岳分岐。ここから十二湖へという標識に従い、縦走路を進む。道は笹が出ていて、部分的 には「踏み跡」のような状態である。ピークの上り下りを繰り返し、10個目のピークが大峰岳。 濡れた路の登降を繰り返す。途中、風が出て雲が晴れ、白神岳山頂の昨日泊まった小屋や,谷を隔てて向白神岳とそれに続く稜線が見渡せるが、すぐに雲に隠れる。
また、時々、海岸線と紅葉の山々が姿を見せる。晴れていればすばらしい展望の稜線だ。 山の頂きから海が見える景色は、なかなか感動的である。 特に、昨日、海岸線から歩き始めたことを考えると、はるばる来たな、という印象が深い。

 約2時間後の10:25に大峰岳。展望のない、何ということもない頂きである。
そこからさらにピークを5つ越えると崩山に至る。途中、ガスが一時晴れ、紅葉と海岸線が見える。 天候は小雨であるが少し回復しているようだ。途中、登山道の右側で、がさごそと音がする。 こんなところで熊にあったら大変と、急いで通り過ぎる。

1時間後の9:30に崩山到着。

ここから斜面を下って行く。

さらに1時間後の10:45に大崩に至る。
ここからは、展望も良く紅葉した十二湖の景色が美しい。大崩は、左側が大きく崩壊している。 そこよりブナ林の中をひたすら十二湖に向い下ってゆく。

約1時間で十二湖の登山口に到着する(10:45)。

紅葉の鶏頭場の池のほとりの大町圭月の碑から青池に寄る。
落ち葉が三分の一くらい覆っているが、神秘的な青い水の色である。 そこから、挑戦館という地元の物産館に出る。ここからバスが出るが、2時間以上待たなければならず、 歩いてビジターセンターに行き見学し、その後、十二湖駅まで歩く。 十二湖は紅葉の最後の耀きを見せていた。

途中、黄金崎の不老不死温泉に電話すると、今夜は泊まれるとのこと。

約1時間で十二湖駅に出るが、電車は3時間ない。 電話でタクシーを呼び黄金崎不老ふ死温泉に向かう。約20分で宿に着く。
チェックインをすませ、2日間雨の中を歩いて濡れネズミになった身体を温泉に。天国の一時である。 不老ふ死温泉は、海のすぐ傍にある温泉で、夕日の見える海岸の露天風呂は有名である。湯治場もある。 入浴の後の海の幸にあふれた夕食は天国の続きであった。

秋田経由で戻る

 11月3日,朝食の後、7時50分に宿を出る。五能線の上りがこの次は2時過ぎまでない。 天候は回復しており,いい天気だ。残念!

良く晴れ渡った海岸線を列車は進む。海と紅葉の山がすばらしい。能代で1時間、秋田で1時間の 待ち合わせのために、新幹線こまちを使っても、大宮に着いたのは夕方5時であった。白神は遠い。

その他

 交通アクセス非常に悪し。
 五能線は一日5本。昼間は空白。
 バスも本数少なく、列車と接続してない。
 タクシーは岩崎村に2台のみ。

費用

交通費 
   こまち割引切符¥28,750 
   東能代~陸奥黒崎\950 
   艫作(へなし)~東能代\1140 
   タクシーJR十二湖~不老不死温泉\2970    計\33,000

宿泊費 
   秋田ビューホテル\5,000 
   不老ふ死温泉\10,000
                       合計 \48,000+α (2000.12記)