遠刈田温泉
地下に眠る火山の痕跡

蔵王山麓の大地の最下層には、およそ2000万年~1500万年前に活動した海底火山の噴出物が眠っています。そのころの日本列島は、ユーラシア大陸から引き剥がされ、その間の日本海が徐々に拡大した時代でした。

当時の日本列島周辺では火山活動が活発に起こっており、陸地だけでなく、海底でも噴火が頻発していました。海底火山の噴火によって噴出した高温の火山灰や溶岩は、海水と接することで変質し、緑泥岩などの粘土鉱物を含む緑~黄緑色の岩石になりました。これらの岩石は「グリーンタフ」と呼ばれています。

 奥羽山脈地下には、2000万~1500万年前の大地の動きの痕跡を残す、このグリーンタフが眠っています。

沸き出でる海底火山の恵み

 蔵王山麓には、かつて奥羽山脈を隆起させた大きな断層がいくつか存在します。この断層のわずかな隙間をぬって、蔵王山麓の温泉は湧き出しており、その成分の元となっているのが、2000万~1500万年前の海底火山に由来するグリーンタフです。グリーンタフは、岩石中に当時の海水成分である、カルシウム、ナトリウム、塩素や硫酸を多く含んでいます。

 蔵王山麓に湧き出る温泉である、峩々温泉・青根温泉・遠刈田温泉の泉質を見ると、やはり、これらと同じ成分を含んでいます。この泉質を持つ温泉は「グリーンタフ型温泉」と呼ばれ、2000万年もの遥かな時を超えて海底火山の噴出物に閉じ込められた当時の海水の成分を搾り出す、まさに大地の営みの産物なのです。

段丘面に位置する遠刈田温泉

 遠刈田温泉は、蔵王連峰が山体崩壊を起こして流れくだった大地を、同じく蔵王連峰を由来とする、澄川及び濁川、そしてその2つが合流して流れる松川の水の流れが削り、あるいは土砂を堆積させてできた平らな地形、すなわち河岸段丘面上に立地しています。
 遠刈田温泉の北側に位置する「権現山(ごんげんさん)」は、山と名はつくものの実は山ではなく、西側に位置する岩崎山を含めて、段丘の張り出し部分に当たります。
 岩崎山の段丘上部には巨礫が存在しており、この巨礫がどこからもたらされたものなのか調査が続けられています。