ミルフォードトラック(Milford Track)は、ミュージーランド南島のフィヨルドランド自然公園内にある、3泊4日のトレッキングコースである。”the finest walk in the world”(DOCのパンフレット)と書かれている、有名なトレッキングルートである。 DOCとは、Department of Conservation(自然保護局)のことで、自然公園の管理等を扱う政府の組織であり、トレッキングの管理を行っている。このミルフォードトラックは、入山管理が厳格に行われており、DOCのパーミッションを取らないと歩くことができない。 小屋の定員にあわせて、毎日40名しか許可が出ない。食料と寝具を背負ってHutという山小屋に3泊し、55kmを歩くトレッキングコースである。(これとは別に「ガイド付きウォーク」ツアーもあるが、値段が高い。個人ウォーク162NZ$に対して1930〜2240NZ$) 個人的な事情を述べると、休みが限られた勤め人にとってはこのルートのパーミッションを取ることは、至難の業で、日本の冬休みや春休みなどは半年前に埋まってしまい。数年前に試みたが,とてもとれる状況ではなかった。(https://booking.doc.govt.nz/Menu.aspx?sg=MIL) 今回、シーズンオフ間近の4月末に取ることができたので、山の会の6名で、出かけることになった。
DAY1 《4月22日》 テアナウからテアナウダウンズを経て、トラックの入口グレードワーフからクリントンハットまで
日本を4月19日夜に発ち、ニュージーランドには翌20日オークランドに着く。国内線でクイーンズタウンまで飛び、2時間のバス旅でテアナウに着き、テアナウホリデーパークのコテージに泊。テアナウは、湖の畔の美しい小さな村。スーパーマーケットもある。
21日午前中、食料を購入するため、スーパーで買い物。13:15にテアナウDOC前からバスに乗車。30分程でテアナウダウンズの船着場。14時に乗船。湖を1時間ほどかけて移動し、グレードワーフに上陸。15時10分に歩き始める。まず、DOCで購入したサンドフライ避けスプレーをかけてから。
温帯雨林のうっそうとした林の中の平坦な道を歩き始める。時折姿を見せる鳥たちは、人間を恐れる様子もなく、戯れているようだ。ファンテールやニュージーランドロビンといった鳥。途中のクリントン川は、透明な、美しい川である。吊り橋が架かっている。
途中、ガイドウォークのロッジを経て、1時間余りのクリントン川に沿った道を歩き、今宵の宿クリントンハットに着く。
ハットは宿泊棟と炊事棟とに分かれ、宿泊棟(bunks)では、二段ベッドがおかれ一人1台40台確保されている。先着順に場所を取り、登録していく。炊事棟では、プロパンガスのコンロがいくつもおかれて、置いてある鍋やフライパン、その他炊事用具を使い調理し、置かれている皿やボウル、ナイフやフォーク、スプーン等で食べる。ただ、ガスは自動点火ではなくマッチやライターで点火するので、これを持っていかねばならない。希望者にハットの周りのミニツアーがあったが、これはパス。
1泊目のこの日のメニューは、鍋でジャポニカ米を炊き、日本から持ち込んだカレールーを使ったカレーライスであった。
毎晩、決められた時間に、Hut Talkというのが行われ、1時間ほど管理人のスピーチがある。今日の管理人は年配の男性。オーストラリアから持ち込まれたポッサムなどは、ここでは生態系の破壊者として捕獲されたいる。捕獲用の「わな」の木箱が、道のそばに多数置かれている。
天気はよく南半球の星が見えていた。南十字星も。
DAY2 《4月22日》 クリントンハットからミンタロハットまで
クリントンハットを8:20に出発。この日は、16.5kmの行程。クリントン川が分岐する地点を北俣north branchに沿って進む。二回の休憩の後11:05Hirereシェルターに至る。12時過ぎにランチ。途中、透き通るような小さな池があり、また飛べない鳥ウェカが草むらの中を歩いている。人を全く恐れない。このあたりは温帯雨林で、伊豆の山のような景色。
バスストップというシェルターを過ぎ、涸れ川をわたると、13:40ポンポローナロッジ。小雨が降り始める。ここから、マッキンノンパスに至る登りの始まり。これまでの平坦な道とはお別れで高度200mの登りになる。15:30ミンタロハット到着。
夕食はパスタとサラダ。
ハットトークは、若き女性の管理人さんで、弾丸のようなスピーチであった。
DAY3 《4月23日》 ミンタロハットからマッキンノンパスを通りダンプリングハットまで
今日はこのコースのハイライト、マッキンノンパスを通過して、滝を見ながら下る一日。幸いにも天気は上々。朝、鳥の鳴き声で目をさます。昨夜、キアというオオムの仲間がイタズラをするから靴の紐をしっかり結んで、釘にかけておくように言われた通り、キアが飛び回って騒いでいる。8:20出発。気温は8℃。はじめ、ミンタロ湖に寄り景色を眺める。いよいよ峠までのジグザグ道を登っていく。標高差500mの急登。
クリントン谷の景色が雄大だ。10:18登りきってマッキンノンモニュメントに到着。晴天のもと、景色を堪能したあと、最高点のマッキンノンパス1154mに向かう。ここには、シェルターとトイレがあり、プロパンガスコンロも置かれている。小屋を11:10に出発し下りはじめる。秋も終わりだが、いくつか花も咲いている。
氷河のモレーンまで下り昼食。途中、エスケープ用の道の分岐がある。ここを過ぎると、ローリングバーン川に沿った急な下りであり、アンダーソンカスケードという滝の連続する、美しい道である。道は、階段が作られ、とても歩きやすい。
途中ロバートアレンシェルターを過ぎ、クインティンロッジに着く。ここからニュージーランド最大の滝、サザーランド滝に行くサイドウォークがあるのだが、道の崩壊のため通行止め。
ダンプリングハットめざしてさらに下る。川は緩やかになり、15:15ダンプリングハットに到着。
今日の夕食は肉じゃがとごはん。ハットトークは21:30から。今日の管理人は若いお兄さん。
DAY4 《4月24日》 ダンプリングハットからサンドフライポイント、船で、ミルフォードサウンドまで
今日は、14時までに18km先のサンドフライポイントまで行かなければならない。7:20に出発。8:44ボートシェルター、9:10ベルロック。釣鐘のような穴の空いた岩。9:55ポセイドンクリークを通過して、11:10ジァイアントゲートシェルターで昼食。出発後5分でジァイアントゲート滝。
12:20レークエーダ。予定より早いので、ここで少し休憩。
13:15に40分ほど余裕を持って、終点のサンドフライポイントに到着する。ここには、33.5マイル(55km)のゴールの標識がある。名の通り、サンドフライがいる。この4日で何度か刺された。日本の蚊より始末が悪い。購入したスプレーも効いているんだか?
しばらく待っていると、13:55に船が到着。14:00に出航して、フィヨルドの海を進んで行く。カヌーを漕いでいるグループもある。10分ほどでミルフォードサウンドの船着き場。観光地らしく、大小何艘も観光船が係留されている。
上陸して、唯一のレストランのブルーダックまで歩き、祝杯をあげる。シャトルバスで少し離れたミルフォードサウンドロッジに移動し宿泊。ここも、宿泊棟とキッチン、食堂が分かれたドミトリーのロッジだが、数日ぶりのシャワーとランドリーはありがたい。
夕食は、レストランで外食。
DAY5 《4月25日》 ミルフォードサウンド観光 テアナウへ
この日は、午前中は、船でミルフォードサウンド観光。あいにく天気はよくないが、これくらいは我慢しなければ。この雨の多い地域で、トラックを歩く4日間、ほとんど雨に遭わずに済んだことに感謝すべきだろう。朝食の後、シャトルバスで船着場へ。荷物を預かってもらい、乗船。船は、観光客を乗せて湾に出て行く。波は静かで、これが海とは思えないほど。
湾の左側に沿って進む。氷河で削られたU字谷の壁がそそり立ち、水が滝となって落ちている。さすがに、沖に出ると、うねりがある。オットセイの生息地などもある。
2時間弱のクルーズを終え、昼食をレストランで取った後、午後のバスでテアナウホリデーパークに戻り、ミルフォードトラックの旅を終える。
地図
地図:NZTopo50-CB08 Homer Saddle 1:50000 ISBN 9414264302083 DOCで NZ$9.00http://www.topomap.co.nz/ で Milford track を検索