はじめに
2016年7月に、10数日の日程で、イタリア北部のドロミテ地方の山旅をした。同行は、山の会の10人。昨年のチロル地方に続く、イタリア・オーストリア国境の山を歩いた。コルチナ・ダンベッツオ
成田発、ドバイ経由のエミュレーツを使い、ベネチアへ。このキャリアは初めてだったが、待ち時間が多いのが難点。機内エンターテインメントは楽しめた。
午後、ベネチア空港に着き、コルチナまでの直通バス。荷物があると、乗換のある鉄道より楽。値段もそこそこだ。早い。ただ、便が少ない。コルチナには夜7時過ぎ着。明るくて、夜、という感じがしない。ホテルに入り、やっと一息。
翌日は、朝、モルゲンロート。この日は、調整をかねて、軽いハイキング、ということで、ホテルからクリスタッロまで歩く。「軽い」はずが、結構な登りで、すこぶるハード。花がたくさん咲いている。
ようやく麓のリオゲーレについて、リフトに乗り2235mのソンフォルカ小屋、ここで(2時になるまで)しばらく待って、2人乗りの提灯のような形のリフトに乗り2930mのフォルセラへ。まわりは、ドロミテ特有の、石灰岩の岩山。フェラータという、ワイヤーを張った道を歩く人達の姿も見える。しばしの滞在の後に下る。下の駅に着いた頃、夕立。ビールを飲んで、雨宿り。夕方のバスで町に戻る。
ドライチンネ
なんといっても、ドロミテを代表する景観は、ドライチンネ。イタリア語ではトレッチーメ。この時期には、コルチナから直通のバスが出ている。バスはミズリーナ湖を経由して、オーロンゾの山小屋(といっても、とても立派)の前に。ここから、ドライチンネを一周するコースを辿る。前回来たときも天気は良かったが、今日もいい天気。ただ時期が、前回は9月、今回は7月で、花の咲き具合がずいぶん違う。真っ盛りという感じだ。赤、青、黄、紫といろいろな花が咲いて目を楽しませてくれる。途中、鳥の群れを見る。
途中の、ドライチンネヒュッテで昼食。こちらからの景色が有名だ。そこからいったん下って、牛の放牧地を通り、登り返して山小屋を過ぎ、一周のコースを終える。かつて、海底で生物の死骸が堆積してできた石灰岩の地層がよくわかる。
バスでミズリーナ湖まで下り、コルチナ行きのバスを待つ。この間に、夕立。レストランに逃げ込み、ビールで時間をつぶす。このところ、連日午後になると夕立が降る。典型的な夏の天気なのかもしれない。やがてバスが来て、コルチナへと戻る。
ジァウ峠とコルチナの町
この日は、フェデラ湖に行こうと思ったが、交通機関の関係でやめにし、入口のジァウ峠まで行き、午後はコルチナの町巡り。バスターミナルに行くと、小さなバザール。ここからバスで、ジァウ峠(PASSO GIAU 2236m)に向かう。町を出ると、延々と坂道を登ってゆく。驚くのは、自転車をこいで坂を登る人の多いこと。これだけの人が自転車に乗っていれば、ツールドフランスのようなレースの人気があるのもわかる。バスは峠に到着。ここは一日にバスが2便しかないので、1時間後のバスを逃すと、5時間待って夕方になる。峠の周辺を散歩。いろいろな花が咲いている。そのうち雲行きが怪しくなって来たので、峠のロッジに戻る。大粒の雨が降ってきて、間一髪セーフ。コーヒーを飲んでバスを待った。大雨の中をバスがやってきた。乗ったのは、3人。ドイツ人夫妻と私。運転手が携帯で連絡を取り、彼らは、途中のバス停で、ファルツァレゴ峠方面のバスに乗り換えた。客は一人で町に戻る。
町では、博物館が3つあるので、最初は美術館を訪ねる。次の古生物博物館と民俗博物館は、新しい建物に移ったようだが、昼休み。しばらく待ってから、再度訪ねた。レストランを除いて全部が休みになるのがイタリアらしい。
カナツェイに移動、マルモラーダ
コルチナから、カナツェイに移動した。カナツェイは、ドロミテの節に当たる町で、いろいろな方面に道が延びている。この日は、インフォメーションで情報を仕入れた後、川沿いの道を散歩。翌日、起きてびっくり!山に雪が積もっている。歩くのは無理と判断し、急遽、最高峰マルモラーダ(3342m)行きのロープウェーに乗ることにし、フェダイア湖行きのバスに乗り、乗り換えて、マルガシャペラのロープウェー乗り場へ。3台のロープウェーを乗り継いで、3270mの展望台へ。この日は、昨夜降った雪のため、気温も零下、寒い、寒い。それでも山頂の十字架がちらりと姿を現した。
麓の公園で昼食。バーでビールを飲んでバスを待ち、乗り継いでカナツェイに戻る。
サッソルンゴ周遊
翌朝は、晴天。周囲の岩山はモルゲンロートに染まっていた。この日は、サッソルンゴ周遊コース。セッラ峠までバス。そこからリフトで、2780mのサッソルンゴのコルまで上がり、ここから周遊コースが始まる。はじめは、昨日の雪が残り、これは・・・と思えたが、すぐ雪はなくなり、急な谷につけられた道を下りてゆく。
途中のビセンツァ小屋を経て右に曲がり、山裾につけられた道を辿る。途中、花花花で、見応えがある。コミシ小屋まで出ると、ゆっくりと山裾を辿り、セッラ峠にもどる。目の前に、セッラ山群、そしてマルモラーダも見え、花の絨毯のような所もある。4時間ほどかけて、周遊コースは完了。カナツェイに戻る。
ピッツ・ボエに登る
翌日は、セッラ山群のピーク、ピッツ・ボエ(Piz Boe 3152m)に登る。石灰岩の奇岩だらけのドロミテのピークの中で、ロッククライミングをしないで登れる数少ないピークである。この日は、ボルツアーノへの移動日になっているので、朝と夕方、タクシーを使って移動することになり、朝、ポルドイ峠までタクシーで行く。しかし、ロープウェーが9時から運転、ということで、1時間ほど待つ。このロープウェーは、サスドポルドイ(2936m)という台地の上まで運んでくれるので、行程自体は、楽だ。
ロープウェーの上の駅に行くと、素晴らしい景色である。マルモラーダ、サッソルンゴとこの2日で訪れた山が近くに見えている。めざすピッツボエは、正面に見えているドカンと置かれた岩山であり、山頂に小屋らしきものが見える。
道は歩き始めは、台地の上を緩く下り、フォルセラ小屋までは下り。そこから、水平に行き、いよいよピッツボエの登りにかかる。登りはじめは、雪原になっているが、すぐに岩の中に作られた道に取り付く。途中、3カ所ほどクサリ場があるが、朝は下りの登山者もいないので、順調に登っていく。
2時間弱で山頂。山頂には晴天で景色はよい。マルモラーダ、サッソルンゴなどの近くの山だけでなく、オーストリアアルプスの白い峰も見えている。山頂に30分ほど滞在。下山にかかるが、登山者とすれ違いが大変で、クサリ場を抜けるのに時間がかかる。途中、昼食。その後、フォルセラ小屋を経てロープウェー駅に戻り、ポルドイ峠に下りたのは、13:45であった。約5時間の山歩き。
タクシーを待ち、カナツェイの宿で荷物をピックアップし、ボルツアーノへと向かう。ボルツアーノの駅前のホテルレジーナ着は、16;40であった。
インフォメーションが18時に閉まるので、荷ほどきもそこそこに街に出て、インフォメーションで情報を仕入れる。明日は日曜日で、インフォメーションも閉まっている。その後、町で夕食。
ボルツァーノ・カレッツア湖
ボルツアーノでの一日は、カレッツア湖まで足を伸ばした。1時間ほどで湖に着くが、この湖の色が素晴らしい。背景にある、石灰岩の山々と青い空のコントラストが絶妙である。湖のまわりの遊歩道を1時間ほどで歩き、昼前のバスで町に戻る。ボルツアーノに戻ると、昼食。旧市街の、細い路地にテーブルを並べるレストランで、パスタ。その後、町を巡る。旧市街の広場の周辺は、歴史を感じさせる。
この町の博物館には、氷河の中から発見された古代人「エッツィー」が保管されている。オーストリアのエッツ谷の奥で発見されたのだが、わずかにイタリア領であったらしい。それで、インスブルックではなく、ボルツアーノの博物館に保管されるようになった由。4階建ての建物全部が「エッツィー」で、いろいろとおもしろい。遺体は、冷凍保存されており、覗き窓から見ることができる。これも、ヨーロッパならでは。日本だとこうはいくまい。発見されたものから、再現された像があるが、なるほどという感じだ。
夜は、この地方の郷土料理。
ベネチア そして帰国
ドロミテの山旅は終了。ボルツァーノから、列車で4時間かけて、ベネチアへ。スメトレ駅前のホテルにチェックインし、そのままベネチア見物。ものすごい人出にうんざりしながら、水上バスでサンマルコ広場へ。そこからローマ広場まで、見物しながら歩く。翌日も、昼間で時間があるので、アカデミア美術館まで行き、見学。ベネチア全盛の頃の巨大な絵画が多数。帰りは、水上バス。ホテルからバスで空港へ行き、ドバイ経由で帰国。
羽田着が23時と遅いので、その日は空港近くのホテルに泊まり、翌朝宮城に戻る。
何とかいい天候に恵まれ、花の盛りの7月に歩いたドロミテは、山の向こうのチロルとはひと味違った、「明るいイタリア」のイメージであった。ドイツにいたゲーテがあこがれるのも無理はない。
地図
ドロミテとチロルDOLOMITI-TIROLO / DOLOMITEN-TIROL CARTA PANORAMIVA E CARTA STRADALE PANORAMAKARTE UND AUTOKARTE 1:500.000 : TABACCO www.tabaccoeditrice.com
コルチナ・ダンペッツォ
Cortina d'Ampezzo e Dolomoto Ampezzane 1:25000 CARTA TOPOGRAFICA per escursionisti : TABACCO 03 :7.50 e www.tabaccoeditrice.com: ISBN 978883150036
ドライチンネ
SEXTENER DOLOMITEN 1:25000 CARTA TOPOGRAFICA per escursionisti : TABACCO 010 : www.tabaccoeditrice.com : 7.50e :ISBN 978883150104
カナツェイとその周辺
Val di Fassa e Dolomiti Fabbane 1:25000 CARTA TOPOGRAFICA per escursionisti : TABACCO 06 :7.50 e www.tabaccoeditrice.com: ISBN 978883150067