カナディアンロッキーを旅する

2007年8月15日〜27日

カルガリー

ロサンゼルス発のAC573便は遅延との表示が出ていた。本来の接続時間6時間に加えて長い待ち時間だった。

もっとも、アメリカの入国手続きで延々並ばされた1時間以上が差し引かれる。

ただのトランスファの客にも両手の指紋を取り、顔写真を撮影する。荷物も、全部持たされるし、靴を脱いでの検査もある。

PCも出させる。これが「テロとの戦い」。

かくして、ようやく、夜11時に、カナダの中央平原の西、ロッキー山脈の東のふもとの大都市カルガリーに到着。

タクシーで予約していた宿へ向かう。着いてみると、そこは、よくアメリカ映画で見る「モーテル」だった。いい経験だ。

部屋は広くベッドも大きい。
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 翌日、カルガリーの町を見物。ここは、東から「開発」を進めたその昔、中央平原の最後、ロッキー山脈への入り口の町であった。

 人口87万人のカナダでは大きな町である。泊まった宿からは、トラムウェイという電車四駅で町の中心に出る。

 この電車は中心部では、路面電車になり、無料らしい。

 「グレイハウンド」のバスターミナルに行き、バンフまでの便を予約し、チケットを購入。その後、町を歩く。

 美しい公園でランチを食べたり、遊んだりする人々の姿が印象的であった。博物館に行くと、とにかくいろんなものが陳列している。

 その中で、先住民(インディアン)の生活と文化についての展示、カナダの開発の歴史についての展示には、特に力が入っている。

 また、MEC(Mountain Equipment Coop)は、巨大なフロアを持つ山やアウトドアの道具屋であり、カナダのアウトドア活動がどのような ものかを見せてくれる。

 トレッキング、ハイキングをはじめ、クライミング、サイクリング、カヌー・・・・いろいろな道具が広いフロアに並んでいる。

 が、5ドル払ってメンバーにならないと、買い物ができない、本来の「COOP」であった。

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バンフへ

 翌17日は、7時半のバスでバンフへ移動。グレイハウンドのバスは初めてだ。荷物には行き先を記したタグをつけなくてはいけない。

 バスはカルガリーの町を出てから国道1号線(トランスカナダハイウェー)を西に向かう。

 1時間もすると鋭い山々が道の左右に見えてくる。8時54分にバンフ到着。

 夏のバンフは泊まるところがない、と聞いていたので気がかりだったが、ツーリストインフォメーションで宿のリストをもらい、

 そこから電話すると、すんなり3泊する宿が取れた。

 ヨーロッパとは違い、ここのツーリストインフォメーションは、リストを配り電話を貸すだけで、予約を取ってくれない。

 「全部自分でせよ」という姿勢である。このあたりは、いろんな国の人間が訪れるヨーロッパとの違いだろうか。

 泊まったのは、町のはずれにあるB&Bである。荷物を置いて早速町の探検。とりあえず今日は「トンネル山」に登ることにする。

 町の中心のバンフ通りは現在工事中で通れない。はじめにツーリストインフォメーションに行き、いろいろな情報を仕入れ、地図を購入。

 次にATMで現金を入手。スーパーでサンドイッチを購入。バンフは人口6000人余の小さな町で、日本で言うなら「村」である。

 中心街も30分で一通り回れるくらいだ。

 11時ころ、トンネルマウンテンめざして出発。町の中心から東へ、住宅地を抜けると、しっかりとしたトレイルが続いている。

 下ってくる人も多い。ジグザグにつけられた道をどんどん登っていく。1時間余で頂上。バンフの町が真下に見える。

 また、周りには、巨大な岩の塊をドンドンとばらまいたような岩山が見える。カスケード山、ランドル山、ノーケイ山などである。.

 川の流れは青く美しい。川に沿って鉄道が走っている。昼食のサンドイッチを食べた後、下山。1時間弱で町へ。見物した後に宿に戻る。

 翌日はシャトルバスでサンシャインメドウへ行くことにした。ヨーロッパアルプスと違い、カナディアンロッキーはハイキングコースの入り口までの交通機関がタクシーしかない。また、入り口には電話がないところも多いので車の手配をどうするかが問題である。

 サンシャインメドウは、冬は大スキー場になるところで夏には高原まで専用のバスで上がり、リフトも動いている。ハイキングコースなっている。入り口までは、車で行くか、バンフの町から1日1便出ているシャトルバスを使う。バスは町外れのバンフフェアモントホテルを8時15分に出るらしい。予約の取り方がよくわからない。

  町を歩いていたら、たまたま、このスキー場のポスターを掲げた運動具屋があり、そこで予約。8時に町中のロイヤルホテルに黄色のスクールバスみたいなバスが来るとのことであった。

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サンシャインメドゥ

 翌日、朝食後に宿を出て、指示された駐車場で待っていたが、バスが来ない。そのうち、黄色いバスが通過してしまった。

 あわててタクシーを拾って、フェアモントホテルまで追いかけ、バスに乗り込んだ。バスには6人の日本人がガイドとともに乗っていた。

 聞いてみると、バスはこのあと、町の中心の駐車場に寄って行くとのこと。8時30分まで待っていればよかったのだ。

 そんなトラブルはありつつも、バスは町を出て、トランスカナダハイウェーに出て、スキー場への道を走る。

 山道に入り10分くらいで道の途中にエルクやマウンテンゴート(ヤギ)がえさを食べている。

 スキー場の駐車場についた後、バスは、ここからの客を乗せて、スキー場内の山道を登り始める。

 9時半にスキー場サンシャインビレッジ着。バスの運ちゃんの青年が、ハイキングの注意などを述べた後、下車。

 メドウmeadowとは「牧草地」転じて「高原」。3つの湖があるハイキングコースがある。  最初にアッシニボインに続くトレールを、ハワードダグラス湖まで往復することにした。

 地形図を見ると緩やかに等高線が走る高原である。実際に歩いてみると、思ったより傾斜がある。

 途中、地形図をよく見ると、等高線の間隔が、25mである。日本の10m等高線を見慣れた目からは、緩やかに見えるはずだーと納得。

 とにかく4kmの道を歩くが、人がいない。たまに大きな荷物を持った2人組に会う。

 彼らは、キャンプしてアシニボインのふもとまで行くのだろう。  

 3時間かけて往復して、湖をめぐるコースに戻ると人でいっぱいであった。

ロックアイランドレークをはじめとする3つの湖は美しい。高台の展望台に登ると多くの山々が見えている。

 横縞の地層が見られる山もあるし尖塔のような山もある。サンシャインビレッジに戻り、4時半のバスに乗る。

翌日はここからヒーリーパスに行くことにして、予約を取る。

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 バンフに戻ると、天気は急に悪くなり、入道雲がわいてくる。 突風が吹き、大粒の雹が降ってくる。体に当たると痛い。雨宿りをした後に、ジャスパーまでのバスを予約。

  れは、観光ツアーなのだが、アイスフィールドパークを通ってジャスパーに行くツアー。ユースホステル会員証で割引がある。

 ついでに、グレーハウンドも、ユースホステル会員証での割引がある。

 翌日も朝、シャトルバスに乗ってサンシャインメドウに。天気はよくない。

 9:30にバスを降り、サンシャインビレッジからヒーリーパスへの道をたどる。

 小雨が降ってきて、雨具を着る。広々とした高原を進む。植生限界より少し上なので両側には、荒地が広がっている。

 遠望は利かない。湖を回る道から分かれ、尾根を越え少し下ったところから樹林帯に入る。両側は針葉樹林で下草も生えている。

 人影はまったくない。道は、林の中を細く続いている。

 「熊が出たらいやだなー」などを考えつつ、1時間余で、シンプソンパス(シンプソン峠)。ここはまったく見晴らしが利かない。

 雨が強くなってきたので、ヒーリーパスまで行くのはやめにしてここで引き返す。

 1時間余森林の中を戻る。途中、この日初めて登山者とすれちがう。尾根まで戻り、昼食。

 このころから天気は持ち直し、雨は小降りになってきた。こんなことならヒーリーパスまで行けばよかったと後悔。

 帰りのバスまでは時間があるので、湖経由でサンシャインビレッジまで歩く。2時半のバスに乗り、バンフに戻る。

 宿へ帰る途中、バッファローネーションズ博物館の売店でお土産を購入。

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ジャスパーへ

 20日は、8:30発のジャスパー行きのツアーバスに乗り込む。一行は9人。大型バスに、てんでに席を取って座る。

 一人141$では赤字かな。トランスカナダハイウェイ(1号線)を通り、キャッスルマウンテンを右に見る。巨大な岩の塊。

 レークルイズに着くと、バスは左に入り山の中の道を進む。ルイーズ湖に出る。

 ビクトリア氷河を正面に、青色の美しい湖で、畔にフェアモントシャトーレークルイズというホテルが建っていて、古城の趣を出している。

 バスは、1号線からアイスフィールドパークウェイをたどって、ボウ湖、ペイト湖と短い停車の後、ちょうど昼時にコロンビア大氷原へ

 着く。1時間の昼食時間の後、バスを乗り換え、雪上車に乗ってアサバスカ氷河の上に行く。

 コロンビア大氷原から流れ出る6つの氷河のうちの1つである。とにかく寒い。長袖の上に雨具のゴアの上着をはおる。

 観光客は、真夏の氷の上で遊んでいる。10分くらいの滞在の後、雪上車に乗り、観光センターに戻る。人でいっぱいである。

 コロンビア大氷原は、分水嶺になっており、ここから太平洋、大西洋、北極海へ注ぐ川が流れている。なんとも雄大な話である。

また、アサバスカ氷河も、この数十年で大きく後退している。それが、展示していた昔の写真との比較で、明らかにわかる。

ツアーのバスは出発し、両側に岩の塊のような山々を見ながらアサバスカ川に沿って下っていく。

途中、アサバスカの滝を見物して、ジャスパーの町に入る。

 ジャスパーでは、町の真ん中にある古いアサバスカホテルに泊まる。

 ジャスパーは、前回のカナダ旅行の時に立ち寄った町であるが、そのときは、冬の真っ只中で、列車の1時間くらいの停車時間に町を歩いただけだった。ジャスパーの町は、バンフよりさらに小さな町で人口も4000人くらいだという。

 少し歩くと町並みも終わってしまう。

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マリンレーク

21日(火)はマリンレークへ行くシャトルバスに乗りこむ。日に4便。

マリンレークは、カナディアンロッキー最大の湖で観光船が出ている。広々とした湖である。

そのマリンレークの畔に、オパールヒルという3時間くらいの軽いハイキングコースがある。

今回の旅行では、膝を痛めていたため、しっかり歩くことができないのがもどかしい。マリンレーク湖畔から標高差400mの登りである。

登山口を探し回って、ようやく見つけた。熊に注意、という警告が書かれている。天気は悪く、寒い。

雨模様なので、途中から雨具を着る。1時間の急登でループの分岐点に出る。左の大回りルートを取る。

樹林帯の中を進んでいくが、突然、見晴らしがよくなる。左側に、頂上に雪がかぶった山が連なり、右には小さな丘のピークが見える。

これがオパールヒルのようだ。広々とした草原である。この草原を進んでいくと、十字路に出る。間違えて、まだ上るのだと左の道を取り尾根を200m以上登ると、眼下にマリンレークの青い色が鮮やかである。

 荷を降ろしルートを確認する、なんと、コースから外れてしまっている。ここで景色を見ながら昼食にする。寒い。温度計を見ると3℃。

手袋もないので手がかじかんでくる。8月でこうである。大急ぎでサンドイッチを食べて下山。

十字路まで戻ると、樹林帯の始まり。急坂をどんどん下る。

 途中、2人、4人の若者のグループとすれ違う。『熊はいるか?』ときかれ、いない、と答えると、笑っていた。

 歩き出すうちに温まってきた。あっという間に登山口に戻り、レストランで飲んだスープがおいしかった。

 バスの時間まで、湖岸を散歩。広々とした、しかし夏にもかかわらず、寒い湖である。 3:15のシャトルバスでジャスパーに戻る。

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ジャスパーにて

 翌日は、マウンテンバイクを借りて、トレールをたどってみることにした。

 バイクを借りるとき、店の女の子にここに行く、というとそのコースは「タフ」といい、サスペンションつきの自転車を選んでくれた。

 国道を走ると、カナダの大きさを感じる。橋を渡り、トレールに取り付く。

 サイクリングトレールは、すべて番号が打たれており、その交差点、分岐点には地図の看板がつけられている。

 Old Fortという、昔の砦のあるトレールをたどってみる。

 とにかく、「自転車道」ではない、普通の山道。登りはギアを切り替え、下りはルート選択が大変だ。

 親子4人の家族連れが走っていた。アサバスカ川沿いのルートを取って戻ることにする。

 こちらもなかなかの道で、ところによっては、左側が数十m川まで切れ落ちている。

 こういうところは安全第一で、自転車から降り、押していく。

 なんとか「自転車道」まで戻ったが、カナダのマウンテンバイクはすごい、と感じた。

 ここから、ジャスパーパークロッジを通って町まで戻ったのが3時。ハイキングとは違った疲れ方の一日であった。

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 翌23日は、ジャスパーイエローヘッド博物館へ。小さな博物館ながらカナダ西部の「開発」の歴史を展示している。

 ここの見るべきものは、アルバータ山のピッケル。

 槇有恒らのパーティーが、カナディアンロッキーの第5の高峰、マウントアルバータに初登頂したのが1925年。

 昔、槙の本(山行)を読んだが、記憶に残っていなかった。改めて、これは大事件だったのだ、と感じた。第二登まで20年余。

 初登の際に山頂に置いてきたピッケルの上部をアメリカ隊が回収しニューヨークのアメリカ山岳会に持ち帰り、

 第5登の長野高校OB隊が下半分を持ち帰ったという「因縁」のピッケル、これが飾られていた。

 物語としても面白いが、それ以上に槇有恒らの業績をいまさらながら認識した。

 帰国後再度読み直した槇の「山行」では、ジャスパーに鉄道が入った直後にアルバータ登山が行われたようで、その当時の記述が面白い。

 彼らは、パークロッジに泊まり、ここを拠点として、登山活動をしたようだ。バス会社のブリュースターの名も「馬方」の名で出てくる。  

カムループスへ

 その後、12:15のグレイハウンドのバスでロッキーの西の麓、カムループスへ。

 バスは、ロッキーの最高峰ロブソンの麓を通るが、残念、山頂部は雲に隠れている。

 この前、鉄道で冬に来たときには、くっきりと見えていた。バスは、どんどんと下っていく。途中のブルーリバーというところで休憩。

 この地名は、槇の「山行」の中にも登場する。  

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山地と平原との境にカムループスの町はある。ここは、トンプソン川の合流地点で、交易の町として発展してきたようだ。

人口6万人余りの町である。町を散歩していたら、公園に赤い鳥居がある。

何かと思って行ってみると、この町が、京都の宇治市と姉妹都市で、公園の一角にそのモニュメントがあるというわけだった。

トンプソン側の雄大な流れの前の赤い鳥居。ちょっと変わった景色であった。

バンクーバーへ

一泊の後、旅の終わりは、太平洋の港町、バンクーバーへ。

この町は、北側に山がありハイキングコースもいくつかあるが、天気が悪いので、ゴンドラのかかっているグラウス山へ行った。トーテムポールがあったり、「樵のショー」をやっていたり。

 ここで見たグリズリー熊。これがカナダの山中にいるのだ。改めて、熊と会わなかったことに感謝して旅の終わりとなる。

 最後に、カナディアンロッキーのピークに立つなら相当な覚悟と準備が必要、トレッキングはレンタカーを借りどこかに長居するのが得策、カナダ山岳会の山小屋を使う山旅も面白そうだ。  


 
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